因習に縛られた寒村の座敷牢で生きる少女を取り巻く愛憎劇

座敷楼-無垢乙女狂育-横溝正史的とでも言うのだろうか、因習が根強く残りそれに縛られて人々が生きている寒村。地主の嘉納家には生まれたときから座敷牢に閉じ込められている少女がいた。「座敷楼-無垢乙女狂育-」には、閉塞された村と家で繰り広げられる、狂った性と愛憎が描かれている。

座敷楼-無垢乙女狂育-仄暗い座敷牢が世界のすべてである少女の名は立花という。先天性色素欠乏症、アルビノである。嘉納家のある村ではアルビノは不吉とされ生まれても殺される運命だったのだが、彼女の両親によって嘉納家んも地下牢に幽閉されることになった。人間との接触は食事を運んでくる嘉納家の婆やのみ。体は成熟しているが、精神は幼いままである。婆やが「暇を頂きたい」と告げたことで、本編の主人公である嘉納家の当主、秋継は立花と出会う。最初こそ扉越しに義務的に接して秋継だが、立花の無垢で純粋な姿に惹かれていく。
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座敷楼-無垢乙女狂育-秋継には妻がある。が、その関係は冷え切っていた。そんな暗澹たる生活が秋継が立花にのめり込んでいる一因でもある。しかも、妻の千鶴子は、書生として嘉納家に住み込んでいる秋継の後輩、向島孝史と不倫関係にあり、そのことを秋継も知っているのである。16歳で旧家に嫁ぎ鬱屈を溜め込んできた妻の千鶴子が与えてくれない安らぎと癒しを、教育を受けておらず世間との接触がないため精神年齢が低く一般常識にも乏しい立花が与えてくれるという構図だ。

座敷楼-無垢乙女狂育-秋継と立花の関係は、羞恥心さえほとんど持たない立花の体に性を覚えさせることから始まり、少しずつアブノーマルなプレイへとのめり込んでいく。立花は「りっかはもっとして欲しいな。好きだってしるし、もっとりっかの中に欲しい……!」と、秋継に身も心も委ねて歪んだ愛を受け止める。自分の浮気は許せても夫の浮気は許せない千鶴子が孝史と謀って、嫉妬心を狂わせたことによって、物語は愛憎渦巻くドロドロの展開へと発展していくことになる。
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2010年03月12日 17時47分